人には誰にでも犬を飼う自由があります。好きな犬と楽しく暮らしたいと望むことは、誰にも侵すことのできない権利です。しかしながら、その権利は当然、犬を飼い始めたあと何をするのも自由だということを保証しているわけではありません。
『他人に迷惑をかけない』『飼っている犬を苦しめたりしない』 犬を飼う以上は、最低限このことが前提になります。人として当然のこれらのことを守るため、犬を飼う人が持つべき最も重要なものが“モラル”です。そして、個人のモラルに委ねるだけでは防ぎきれないリスクの回避を担保するために法律があります。
狂犬病予防法
狂犬病は、20世紀の半ばまで日本でも多くの犬や、そのほかの家畜、そして人間までもが発症していた恐ろしい伝染病です。
狂犬病の恐ろしさは
- 発症してしまえば治療の方法がなく、その致死率は99.99%
- 犬のみならず、ヒトを含めた全ての哺乳類に感染する
ことにあります。
狂犬病予防法が施行されたのが1950年のこと、その後7年で狂犬病は撲滅したとされ、人では1956年、動物では1957年を最後に日本で発生した例はありません。
しかしながら、世界では未だに毎年5万人もの人たちが狂犬病によって命を落としており、日本は今でも狂犬病ウイルス侵入の脅威にさらされているのです。
この恐ろしい伝染病である狂犬病の発生を100%抑えるために、犬の飼い主に課された義務が次の二つのことです。
①登録
飼い主は犬を飼い始めてから30日以内(生まれたばかりの子犬は生後90日を経過した後30日以内)に、最寄りの市区町村役場などに行って登録の申請をしなければなりません。登録にかかる費用は自治体によって多少の違いはあるものの、概ね3000円程度です。
登録が済むと、首輪に付け『鑑札』と、玄関などに貼り付ける『犬』と書かれたステッカーが渡されます。鑑札は首輪に、ステッカーは玄関に必ずつけておきましょう。
観察の番号は、いわば犬の戸籍のようなものです。観察さえ付いていれば仮に迷子になってどこかで保護されたとしても必ずあなたのもとに帰って来れるのです。
②狂犬病予防注射
犬にお飼い主は、生後91日を過ぎた犬は年に1度(4月~6月)、狂犬病予防注射を受けさせる義務があります。狂犬病予防接種を受けると、市区町村から注射済票が交付されますので、これも必ず犬の首輪につけておきましょう。
狂犬病予防接種はお住まいの市区町村の集合接種、またはお近くの動物病院で受けることができます。費用は概ね3000円台です。
狂犬病予防法に基づいた登録と狂犬病予防接種によって交付される『鑑札』と『注射済票』。もしも、あなたの愛犬が迷子になって、保健所預かりになった場合。『鑑札』がなければ飼い主のあなたを特定することは難しく、やがては「殺処分」ということになってしまいます。
『鑑札』と『注射済票』、二つは文字通り、あなたの愛犬の命を守る“おふだ”なのです。くれぐれも粗雑に扱って紛失などしないよう、大切にしましょう。