犬が食餌をとる姿を見ていると、脇目もふらずに一気のたいらげてしまいます。
人間であればお行儀の悪い部類に入るでしょう。
見ている飼い主にしてみれば、
「よほどお腹が空いていたんだろう、足りなそうだからもう少し何か食べさせてやろう。」
そんなふうに思ったとしても無理はありませんが、この食べ方が犬にとっては普通の食べ方なのです。
本来、動物にとって食餌の時間は、睡眠、排泄、生殖に費やす期間と同様に、最も“危険”な時間なのです。したがって、くつろいだ状態でゆっくりと食事を楽しむのは人間だけがする文化的な行為であって、わざわざそんな危険なことをする動物は人間以外にはいません。
牛や馬などの草食動物が草を食べているところは、のんびりとした光景に映るかもしれませんが、彼らにしてみれば、栄養価が低く消化に時間のかかる草を食べるためには仕方のないことなのです。食餌に時間がかかる分、彼らの睡眠時間はとても短いのです。牛も馬も平均の睡眠時間は3~4時と言われています。
草食動物に比べると、肉食動物の食べる動物の肉や内蔵は消化もよくカロリーも高いものなので、引き裂いて丸呑みすればよく、食餌の時間も草食動物に比べると極めて短時間で済みます。
もともとが肉食動物である犬の場合もこれに当てはまります。
さらに、犬はもともと“群れ”で行動していた動物です。目の前にある食べ物はさっさと食べてしまわなければ他の犬に食べられてしまうのです。
犬にとって「食べる」ということはそういうことなのです。
食べている姿を人間に置き換えて「足りないのでは」などと思うのは人間の独りよがりです。
それによって肥満になり、結果として健康を害する方が、犬にとってはよっぽど可哀想なことになるのです。
「おかわり」は与えない。これが犬に対する正しいスタンスなのです。