鉤虫は犬の小腸に寄生します。成犬の場合は、ほとんどが軽い症状ですみますが、子犬の場合は重症化することがあるので要注意です。
原因
鉤虫は感染した犬の便に混じって卵が排出され、これが孵化して感染幼虫になります。感染幼虫は主に土の中に生息して、宿主として寄生する動物を待ち構えています。
感染幼虫が体内に侵入する方法には次の3つがあります。
①経口感染
食餌、水、食器などについた感染幼虫を口にすることで感染する
②経皮感染
皮膚や毛穴から感染幼虫が体内に侵入することで感染する
③胎盤感染・経乳感染
感染した母犬から胎盤や母乳を介して感染する
症状
成犬が感染した場合には、ほとんどが軽い症状で済みます。ただし、栄養状態が悪かったり、抵抗力が落ちている老犬の場合は重症となる場合もあるので注意が必要です。
最も注意が必要なのは、生後5ヶ月以下の子犬の場合です。とくに、胎盤感染や経乳感染した子犬では、急速に症状が悪化して死亡することもあります。
鉤虫症は、症状の程度、発症の仕方から4つのタイプに分類されます。
- 甚急性鉤虫症
胎盤感染・経乳感染した新生子犬に起こる最も症状の重いタイプです。生後1週間くらいで母乳を飲まなくなり、元気がなくなります。下痢をしたり粘血便が出て衰弱していきます。しだいに重い貧血状態になり、ほとんどは1ヶ月程度でえい死に至ります。
- 急性鉤虫症
子犬に大量の鉤虫が寄生した場合がこのタイプです。食欲不振となって痩せていき、タール状の黒い粘血便や出血性の下痢を起こします。貧血がひどくなり、目や口の粘膜が白っぽくなります。また、お腹が痛いために背中を丸めた姿勢で、おなかをかばいます。衰弱して死に至ることもあります。
- 慢性鉤虫症
成犬に寄生した場合がこのタイプです。
寄生数が比較的少なく、激しい症状が現れることはまれですが、栄養分を寄生する鉤虫にとられてしまうため、慢性的に貧血が続いたり、下痢を繰り返すといった状態が続き、毛艶も悪くなります。
- 二次的鉤虫症
成犬でも体調が悪かったり、抵抗力の落ちている老犬が鉤虫に感染するケースです。抵抗力が弱っているために症状も重くなり、場合によっては死亡することもあります。
治療・予防
軽症であれば、獣医師に処方された駆虫薬で鉤虫を駆除します。鉤虫が体内を移行している場合は一度で駆虫できないこともあるので、再検査をして完全に駆除できるまで投薬による治療を続けます。
症状が激しい場合は、まずはその治療が先決です。保温と安静を保ち、輸血・輸液によって体力の回復をはかります。
感染や再感染の予防のためには、犬の住環境を清潔に保ち、糞便はすみやかに処理します。また、散歩中には他の犬の糞便で汚染されていりような場所には近づかないようにします。
交配の予定がある場合は、その前に必ず検査し、感染している場合は完全に駆虫できたことを確認した後に妊娠させましょう。