歯周病にかかる犬の割合が年々増えてきています。歯肉がおかされて歯周病にかかると、食べることが不自由になるだけでなく、最悪の場合は細菌が全身に及ぶこともあります。
原因
歯周病は、歯のまわりにある歯肉(歯茎)に炎症が起こる病気です。歯肉の炎症は、付着した歯垢がもとでおこります。歯垢の中には、口の中で繁殖した細菌が大量に存在し、これらが歯肉を刺激することで炎症を起こします。
歯垢はやがて歯石になります。歯石が歯と歯肉の間の溝に沈着すると、溝がどんどん深くなり、歯周ポケットというすき間ができます。このすき間もまた細菌
まの絶好のすみかになります。進行するとここに膿がたまり、いわゆる歯槽膿漏という状態になります。
歯肉の炎症が進むと歯肉が痩せていきます。さらには歯を支えている歯槽骨までもがやせ細っていきます。歯がぐらついたり抜けたりするのはこのためです。
歯周病は、糖尿病にかかったり、ホルモンバランスが崩れているとき、栄養状態が悪い時などにかかりやすくなります。
症状
歯周病の初期症状は、歯肉がはれたり、歯肉からの出血が起こる歯肉炎と呼ばれる段階です。この状態では、なかなか気づくことはむずかしく、実際に歯周病を発見できるのは次のような症状があらわれた時です。
◆口臭が強くなる
◆腐敗臭がする
◆歯が茶色に変色する
◆食餌に時間がかかり、食欲が無いように見える
◆歯が以前よりも細長くなったように見える
口臭が強くなったり腐敗臭がするのは、歯肉に膿がたまっているためです。食餌に時間がかかるのは、歯が痛かったり歯がぐらついたりして食べづらいためです。
また、歯が細長くなったように見えるのは、歯周病が進行して歯肉が萎縮し、下がってしまったのが原因です。歯の根元が見えたり歯がぐらついたりするのは、歯周病がかなり進行している証拠です。
さらに進行すると、目の下あたりから、たまった膿が出てくることもあります。
怖いのは、歯周病を長期間放置すると、全身が細菌におかされ、ほかの複数の病気を引き起こすことです。
治療
歯肉の炎症でおさまっているうちに、歯垢や歯石の除去を行い、歯周ポケットにたまった膿などを取り除きます。その後、抗生物質などを投与します。ぐらついている歯も、なるべく残すように治療することが望ましいですが、目の下から膿が出るほど進行していれば抜歯のやむを得ません。
予防に欠かせないプラークコントロール
素人が歯石を除去するのはとても困難です。そこで大切なのは、歯石になる前の、歯垢(プラーク)の段階で除去することです。これをプラーク・コントロールと言います。
プラークコントロールの基本は歯磨きです。歯磨きの習慣は、子犬の時からしつけて習慣づけることが大切です。成犬になってからでは嫌がってブラッシングを拒みます。嫌がるようであれば、最初は指で歯に触ることで徐々に慣らしていきます。
慣れてきたら、水で濡らしたガーゼを指に巻き、歯の表面をこすります。これにも慣れたら歯ブラシに替えて歯磨きを行います。
人間の子供用歯ブラシを使い、歯肉に垂直に歯ブラシをあてて、円を描くようにして磨きます。歯磨き粉は必要ありません。また、歯ブラシは強く押し当てず、なでる程度の力で十分です。
さらに、半年に一度は、獣医さんに歯石の除去をしてもらいましょう。